意匠第8回:関連意匠制度の活用法
2025/02/08
意匠第8回:関連意匠制度の活用法
製品ラインナップの充実やバリエーション展開は、多くの中小企業にとって競争力を高める重要な戦略です。しかし、デザインの一貫性を保ちながら商品ごとに意匠を保護するには、効率的で柔軟な仕組みが必要です。そこで役立つのが「関連意匠制度」です。
本稿では、関連意匠制度の概要とその活用法、さらに商品ラインナップに合わせた効果的な意匠戦略について解説します。
1. 関連意匠制度とは?
関連意匠制度は、基本意匠(本意匠)と類似性を持つ意匠を保護するための制度です。これにより、製品ライン全体のデザイン統一性を守りつつ、個別の意匠権を取得することができます。
- 制度のポイント
- 本意匠と「類似する」意匠であれば、関連意匠として登録可能でした。法改正により2020年4月から、本意匠と類似していなくても、登録された関連意匠と類似していれば関連意匠として登録が可能となりました。
- 本意匠の出願日から10年以内に出願する必要があります。
- 本意匠と関連意匠は独立した意匠権として保護されるため、それぞれ個別に権利行使が可能です。
- 活用例
- 本意匠:椅子の全体デザイン
- 関連意匠:脚部のデザインが異なるバリエーションや肘掛けを追加したモデル
2. 関連意匠制度の利点
- シリーズ製品を一貫して保護
- デザインの統一感を維持しながら、個々の製品に対応する意匠権を取得できます。これにより、シリーズ製品全体の模倣を防ぎやすくなります。
- コスト効率の向上
- 本意匠と関連意匠を組み合わせることで、全体意匠を1件ずつ出願するよりも効率的に保護できます。
- 柔軟なデザイン展開が可能
- 本意匠を起点に複数のバリエーションを登録することで、市場のニーズに合わせた製品展開を容易にします。
3. 関連意匠制度の活用法
商品ラインナップに合わせた意匠戦略として、関連意匠制度をどのように活用するかを以下に紹介します。
- シリーズ製品の一括保護
- 同一ブランドで、デザインを統一した製品ラインを展開する場合に有効です。
- 例: 同じ形状を持つ異なるサイズのバッグ、色や素材のバリエーションを持つ家具。
- 派生モデルへの適用
- 本意匠を登録した後、マーケットの反応に応じて新しい派生モデルを開発する場合に利用します。
- 例: スマートフォンケースの基本デザインから、カラーバリエーションや特定部分を改良したモデルを関連意匠として追加。
- 競合の模倣を阻止
- 本意匠だけではカバーしきれない類似デザインを関連意匠で登録し、第三者による模倣を効果的に阻止します。
- 将来の展開を見据えた戦略
- 本意匠を登録後、5〜10年以内に関連意匠を追加出願することで、長期的な保護を計画します。
4. 関連意匠制度の注意点
- 類似性の判断基準
- 関連意匠として認められるためには、登録された本意匠または関連意匠と類似性があることが必須です。類似性が不明確な場合、拒絶されることもあります。
- タイムリミット
- 本意匠の出願日から10年を超えると、関連意匠としての出願はできなくなります。タイミングに注意が必要です。
- 本意匠の維持が重要
- 本意匠が無効となった場合、関連意匠も影響を受ける可能性があります。本意匠の維持に十分注意しましょう。
5. 成功事例:関連意匠でブランド価値を強化
事例:家具メーカーA社
- 背景: A社は独自のデザインを持つ椅子を販売しており、異なるバリエーション展開を計画。
- 本意匠登録: 最初に基本となる椅子のデザインを意匠登録。
- 関連意匠登録: バリエーションとして、脚部の形状を変更したモデル、背もたれに装飾を追加したモデルを登録。
- 結果: シリーズ製品全体を保護しつつ、競合他社の類似品を効果的に排除。ブランド価値が向上。
6. まとめ
関連意匠制度を活用することで、製品ラインナップ全体を効率的かつ柔軟に保護できます。中小企業がシリーズ製品の差別化やブランド強化を図る際に、この制度は大きな力を発揮します。
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