著作権第8回 著作権侵害への対応方法:効果的な対策と法的手続き
2024/11/30
著作権侵害への対応方法:効果的な対策と法的手続き
現代のデジタル社会では、著作権侵害が頻繁に起こっており、クリエイターや権利者にとって深刻な問題です。無断でコンテンツが使用されると、権利者が本来得られるはずの利益が損なわれ、コンテンツの価値が低下することもあります。本稿では、著作権侵害が発生した場合の対応法や法的手続き、さらに損害賠償請求までの流れを詳しく解説し、権利者が取るべき適切な対策を紹介します。
1. 著作権侵害とは?
著作権侵害とは、著作権者の許可なくその著作物を無断で使用する行為を指します。具体的には、他者が作成した文章や音楽、映像、画像を無断でコピーや配布、転載することが典型的な著作権侵害の例です。著作権法では、著作権者が有する「複製権」「公衆送信権」「譲渡権」など、排他的な権利を侵害する行為を禁止しており、侵害が認められる場合は適切な対策が求められます。
2. 著作権侵害が発生した際の基本的な対応
著作権侵害を発見した場合、まずは冷静に状況を確認し、以下の基本的な対応を行います。
(1) 証拠の確保
侵害が発生したと判断した際、まず必要なのは確実な証拠の収集です。以下の証拠を確保しましょう。
- 侵害行為が行われたウェブページのスクリーンショット
- 無断使用されたコンテンツのコピー
- 侵害行為が行われた日時、場所、侵害者の情報(可能であれば)
これらの証拠は、後に法的な手続きに移行する際に必要となるため、確実に保管しておくことが重要です。
(2) 侵害者への通知
多くの場合、まずは侵害者に直接通知し、侵害行為を即時停止するよう求めます。この通知には「警告書」または「通知書」を用いるのが一般的で、郵送やメールでの送付が推奨されます。通知書には次の内容を記載します。
- どのように著作権が侵害されたかの説明
- 侵害行為の即時停止の要請
- 無断使用されたコンテンツの削除要求
- 必要に応じた損害賠償の可能性への言及
侵害者が悪意なく行った場合、警告を受けることで速やかに対応するケースが多いため、まずは通知を行うことが有効です。
3. 法的手続き:警告書で解決しない場合の対策
警告書に応じず、侵害行為が続く場合や、悪質な侵害と判断される場合には、法的手続きに進むことを検討します。以下は、日本での主な法的手段です。
(1) 損害賠償請求
著作権侵害により実損が生じた場合、侵害者に対して損害賠償請求が可能です。損害賠償請求の手順は以下の通りです。
- 損害額の算定
侵害による損害額を算出します。算定には、著作権者が本来得られるはずの利益や、侵害者が得た不当な利益が基準となります。著作権法第114条では損害額の推定規定が設けられており、立証負担が軽減されます。 - 弁護士への依頼
損害賠償請求には法的知識が求められるため、専門の弁護士に依頼することが一般的です。弁護士が証拠に基づいて交渉を行い、必要に応じて裁判手続きに進むことができます。 - 和解の可能性
侵害者と和解が成立すれば、裁判を回避して損害賠償を受け取ることが可能です。和解が成立しない場合には、訴訟へ進むことになります。
(2) 差止請求
著作権者は侵害行為の停止や予防を求める「差止請求権」を有しています。継続的に侵害が行われている場合は、裁判所に差止請求を行い、侵害行為の即時停止を求めることができます。特に悪質で継続的なケースに対しては有効な手段です。
(3) 刑事告訴
悪質な著作権侵害については、刑事告訴を行うことも検討されます。日本の著作権法では、著作権侵害が刑事罰の対象となり、個人では「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」、法人では「3億円以下の罰金」が科される可能性があります。現在は、著作権侵害は非親告罪とされており、告訴がなくても起訴されることがあるため、重い制裁が課されるケースもあります。
4. 著作権侵害への具体的な対応方法
侵害が確認された場合、速やかに適切な手段を講じます。
(1) デジタルミレニアム著作権法 (DMCA) の活用
インターネット上での著作権侵害には、アメリカのDMCAに基づく削除要請が有効です。DMCAは米国内の法律ですが、国際的なプラットフォームでも広く適用されており、YouTubeやFacebookなどでの著作権侵害コンテンツの削除依頼に使用できます。
(2) SNSや動画プラットフォームでの対応
YouTubeやX(旧Twitter)などのSNSや動画プラットフォームには、独自の著作権侵害報告システムが備わっています。これを利用し、無断使用されているコンテンツを報告することで削除が可能です。報告時には、権利者情報や侵害コンテンツの詳細を記入します。
(3) IT企業との連携
著作権侵害が深刻化する中、警察やIT企業と連携して対応する動きも増えています。例えば、特定の著作物が不正コピーされ流通している場合には、警察やインターネットプロバイダーへ通報し、対応を求めることも可能です。
5. 著作権侵害の予防策
侵害が起こる前に予防する対策も効果的です。
(1) コンテンツへの透かしや署名
著作権を主張するため、画像や映像に透かしや署名を入れると、無断使用された場合にも権利者を証明する材料となります。
(2) 利用条件の明示
著作権に関する情報や使用条件を明記し、許可なく使用できない旨を周知させることも予防策として有効です。
(3) 定期的なモニタリング
自身の著作物が無断利用されていないか、インターネット上でのモニタリングを定期的に行いましょう。画像検索ツールや侵害検知サービスの活用も効果的です。
6. まとめ:著作権侵害への適切な対応
デジタル時代の著作権侵害は深刻な問題ですが、権利者が適切な対応を取ることでその被害を軽減できます。著作権侵害が発生した場合には、まず証拠を確保し、通知書を送付したうえで必要なら法的手段を講じます。また、事前に予防対策を行い、著作権侵害を防ぐことも大切です。
権利者が自らの著作物を守り、創作活動に安心して専念できるよう、著作権侵害に対する適切な対応を心がけましょう。
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