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知財を守る防波堤:水際対策の概要

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知財を守る防波堤:水際対策の概要

知財を守る防波堤:水際対策の概要

2024/11/07

知財を守る防波堤:水際対策の概要

知的財産権を侵害する製品や商品が海外から流入することを防ぐために、日本をはじめ多くの国々では「水際対策」と呼ばれる措置が取られています。水際対策とは、侵害品が国内に入る前、つまり輸入段階で押さえ込み、国内市場に流通するのを防ぐための手続きを指します。これにより、国内の知的財産権が侵害されるのを防ぎ、権利者が適切な保護を受けることが可能となります。日本国内の税関の中で東京税関は水際対策の中心的役割を果たしています。以下では、この水際対策について、請求の主体、対象となる製品、手続きの流れについて詳しく解説します。

1. 水際対策の概要

水際対策は、知的財産権を侵害する可能性がある製品が外国から輸入される際に、税関でその輸入を差し止める措置です。具体的には、特許権、商標権、著作権、意匠権といった知的財産権を侵害する製品やコンテンツが対象となります。輸入段階でこのような侵害品を阻止することで、国内での流通や販売による権利侵害の拡大を未然に防ぐことが目的です。

2. 請求の主体

水際対策を請求できる主体は、知的財産権の権利者、またはその権利を正当に代理する者です。具体的には以下のような権利者が水際対策を請求できます。

  • 特許権者:自社の技術や発明を特許として保護している企業や個人。
  • 商標権者:ブランドロゴや商品名を登録商標として保護している企業や個人。
  • 著作権者:創作物(例えば、音楽、映像、書籍など)の著作権を持つ作家、アーティスト、または制作会社。
  • 意匠権者:製品デザインや外観を登録意匠として保護しているデザイナーや企業。

これらの権利者が自ら請求を行うか、権利者の代理人がその手続きを進めることが可能です。

3. 対象となる知的財産権侵害

水際対策で輸入差し止めの対象となるのは、次の知的財産権を侵害する製品や物品です。

  • 特許権侵害:特許を取得した技術や発明を無断で製造した製品が輸入される場合が該当します。例えば、特許権者が持つ技術を使用して海外で製造された機械や部品が輸入されるケースです。
  • 商標権侵害:他社の登録商標を無断で使用した製品、いわゆる偽ブランド品が対象です。たとえば、有名ブランドのロゴや名前を無断で使用した偽造品の輸入が典型的な例です。
  • 著作権侵害:音楽や映像、書籍、ソフトウェアなど、著作権で保護された作品を無断でコピーした商品(海賊版)が輸入される場合が該当します。
  • 意匠権侵害:登録された製品のデザインを無断で模倣した製品が輸入される場合が該当します。例えば、他社の製品デザインを模倣した家具や電子機器が対象となります。

4. 手続きの流れ

知的財産権を侵害する製品の輸入を差し止めるための水際対策の手続きは、以下の流れに沿って進められます。

4.1 輸入差し止めの申し立て

まず、権利者は輸入差し止めを求める申し立てを税関に対して行います。この申し立てには、以下のような情報が必要です。

  • 知的財産権を証明する資料(特許証、商標登録証、著作権証書など)
  • 侵害品の具体的な特定(どの製品が侵害しているかの説明、侵害品のサンプルや写真)
  • 侵害の根拠(侵害がどのようにして起こっているかの技術的・法的説明)

税関は、この申し立てを受けて、輸入される物品が侵害品であるかを審査します。

4.2 税関による審査

税関は、輸入品が知的財産権を侵害しているかどうかの判断を行います。この段階で、必要に応じて税関は権利者に追加の情報提供を求めたり、侵害品とされる物品を詳細に調査したりします。

  • 侵害品の特定:税関は輸入品が申し立てられた権利に対して侵害しているかを確認します。物品の形状、ラベル、技術的仕様などが登録商標や特許、登録意匠と一致するかどうかを慎重に確認します。
  • 輸入業者への通知:税関は輸入業者にも連絡し、侵害の疑いがある旨を通知します。

4.3 審査結果と対応措置

審査の結果、輸入品が知的財産権を侵害していると判断された場合、税関は以下の措置を取ります。

  • 輸入差し止め:該当する侵害品の輸入を即座に差し止め、国内への流入を防ぎます。侵害品はその場で押収され、輸入業者はそれを販売することができません。
  • 製品の破棄や返送:差し止められた製品は、最終的に破棄されるか、輸入元に返送されるかします。

4.4 異議申し立てと和解

輸入業者は、輸入差し止めに対して異議を申し立てることができます。この場合、輸入業者と権利者の間で、法的な争いが発生する可能性があります。和解が成立する場合もありますが、裁判に持ち込まれることもあります。

5. 水際対策の重要性と限界

5.1 水際対策のメリット

  • 国内市場の保護:知的財産権侵害品が市場に流入するのを未然に防ぎ、権利者が適切な保護を受けることができます。
  • ブランド価値の維持:偽ブランド品や模倣品の流通を防ぐことで、企業のブランド価値や信頼を守ることが可能です。
  • 権利者のコスト削減:侵害品が市場に出回った後に訴訟を起こすよりも、輸入段階で差し止める方が時間とコストを抑えることができます。

5.2 水際対策の限界

  • 侵害品の特定が難しい場合がある:特に特許権や意匠権の侵害品は、技術的な面やデザインの細部が関わるため、侵害の判断が難しくなることがあります。
  • 迅速な対応が求められる:輸入される製品の数や種類が多く、税関での審査に時間がかかる場合、迅速な対応が難しくなるケースもあります。

6. まとめ

水際対策は、知的財産権を侵害する製品の輸入を防ぐための非常に重要な手段です。権利者が適切な手続きを行い、税関と連携して侵害品の流入を防ぐことで、国内市場での知的財産権の保護を強化できます。ただし、侵害品を特定し、迅速に対応するためには、権利者自身がしっかりとした管理体制を整え、必要な情報を税関に提供することが不可欠です。また、侵害品の流通を防ぐためには、国際的な協力も重要であり、各国間の連携を強化することが今後の課題となるでしょう。

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